今年の受験が、残すところ公立高校のみとなりました。
受験ですから、そして私が運営しているのは学習塾ですから、出来る限り全員の第一希望を叶えようと日々奮闘しておりますが、なかなか思い通りにならず、この時期は現実から逃げたくなることも多々あります。
何年経っても、生徒や保護者様の悲しそうな、寂しそうな表情に慣れることはありません。
その中で今年、最も印象的だったのは、とある男子生徒です。
中学1年生の最初から、受験が終わる中学3年生まで通塾してくれました。
また、受験の終わった今も、自習室で高校内容の予習をしています。
この男子生徒について、本人の許可も受けましたので、少し振り返ってみたいと思います。
(「ある程度好き勝手書いてもええで」と言われたので、好きに書かせてもらいます)
この子の中学1年生時代を思い出すと、「計算は速いが、雑」「『漢字が全く覚えられへん』と逃げの手を打つ」「英単語も同様」といったネガティブな記憶が先に来て、「素直さ」など、ポジティブな要素の方が少なかったように思います。
初めての五ツ木模試は偏差値50ちょっと。
保護者面談でも「もっとやれば上がりそうな雰囲気はありますが、部活だなんだとそちらに時間を割くなら、星林高校が関の山でしょう」というお話をしたように思います。
ただ、このときの保護者様の反応は、「(本当に今の時代に増えた)言うてるんですけどねえ」といった諦める雰囲気でも受け入れる雰囲気でもなく、「では、どうすれば成績が上がるのでしょうか?」といったものだったことはよく覚えています。
私は、「宿題を塾の日のギリギリに済まそうという学習姿勢を早く改善しなければなりませんから、まずは宿題を早めに終わらせる癖をつけるところからだと思います。本来、当塾の自習室は塾の宿題を進めるためのご利用を制限していますが、まずは自習室で塾の宿題をし、学習の癖をつけるようにしていきましょう。ただし、自習室は授業の翌日に必ずお越し下さい。つまり、週2回の授業のあと週2回の自習室をご利用頂き、週4回は塾に来るようにしましょう。そして、それが本当に出来るのかどうかも含めて、様子を見ていきましょう」とお伝えし、中学1年の9月あたりから週4回の通塾が始まりました。
本当のところをいえば、他府県では週3日、4日くらいの勉強をする中学生は多いです。
自習室の無い塾に通塾していても、家庭学習で課題を進める日を設けている子が多いです。
しかし、和歌山はまだその位置に意識を持っていける中学生も保護者も割合的には低いと感じています。
まあ、その結果が今の公立中学生の惨憺たる学力になっているわけですが・・・。
ですので、この生徒もどこまで出来るのか、ご家庭の協力を頂けるのか半信半疑でスタートすることとなりました。
この子が、そしてご家庭が素晴らしかったのは、週4日、ほとんどの週でそれを続けていったことです。
とはいえ、自習室に来ても、塾の宿題をする=他の人も当たり前にしていること、を続けているだけですので、その次の模試では、さほど好影響が出ることはなく、ちょびっとだけ上昇を見せたものの、現状維持に近い偏差値となりました。
ただ、週4回を継続して来れましたので、次の段階です。
「今度は塾の宿題+課題としましょう。この子に必要な課題を与えます。宿題と共に、そこまでクリアしたら帰って良いという日も作りつつ、頑張ってもらいましょう。」という、課題=学力を伸ばすための学習を追加してみました。
それもまた、よくこなしてくれました。
半年続けた後の、中2の夏休み明けの模試では、偏差値59.9、向陽高校を狙うにせよ、高専を狙うにせよ、また私立高校に進学したいとなっても通用しそうな学力(合格だけなら桐蔭高校も行けるかもと思いましたが、中2の段階では内申点がそこまで無かったし、五ツ木模試で偏差値59.9だと、桐蔭高校で平均点以上を維持するのは難しそうなので勧めることはありませんでした)まで到達しました。
これならまだまだ上がる、課題内容を更に重くして学力を更に上げていこうという道筋が見えました。
ところが、この頃に異変が起こります。
勉強したくなくなったのです。
自習室に来なくなり、週2回の塾の授業だけを受け、それ以上はやりたくなくなったのです。
これは中学2年生で起こる可能性が高いこと(むしろ、和歌山県内で起こらないとしたら、その子が立派なだけと言っても良いと思うほどのこと)で、そこまで頑張って来ても、夏の部活で大きく体力を使い、部活で最上級生となり忙しくなり、周囲のある程度以上の偏差値が必要な大学への進路が消え去った生徒たちのお気楽な様子を見て、また、単純に中学2年生の後半から、努力だけではなく能力も必要な学習状況になったことで、中学2年生を乗り越えられずに沈んでしまう子は公立中学生だけではなく、全中学生に起こりがちなことです。
(余談ですが、子どもたちにも保護者様にも、私は常に「中学2年生を乗り越えられるかどうかで高校受験は決まる」とお伝えしております。更にいえば、大学受験も大きく、平均以上の大学、以下の大学に進学できるかどうかもこの時点でほぼ確定すると思っています)
この子もしばらく・・・1ヶ月か2ヶ月か、様子を見ていましたが、なかなか改善が無く、もしかしたらこのまま勉強は無理になっていってしまうのかもしれない・・・でも、模試で偏差値60近くはあるし、成績が低下していっても星林高校合格は確実レベルまでは何とかなるかもしれない・・・と、覚悟を決めつつ、ただ、ギリギリのラインを探り、せめて星林高校合格の学力は維持させて高校受験をしてもらおうなどと考えていました。
ところが嬉しい変化が起こります。
また、週4日の通塾が復活したのです。
そして、課題も以前のようにこなしてくれるようになりました。
これが非常に大きかったです。
今のご時世もありますが、保護者は子どもの好きにさせ過ぎてしまって、1度潰れたらおしまいとなるパターンがものすごく目立つようになっているからです。
(後に生徒から話を聞くと「母親から『ええから塾に行き』ばっかり言われて無理やり行かされた」と言ってましたが、お子さまの性格や目標もありますが、それくらいの強制力を働かせても良い子はたくさんいると思いますし、それがあって初めて能力を発揮出来てくる子もたくさんいると思います)
その後は、私の精神的な部分では楽なものでした。
本人はしんどかったと思いますが。
必要に応じ、週5日(授業2日+自習室3日)にしても素直に来てくれましたし、1回の自習室利用時間を3時間、4時間、5時間と伸ばしても(ときに集中力を切らせて、やる気を出し惜しんでいた日もありましたが)ある程度素直に応えてくれ、とにかくこちらから出す課題の多くを期限を守ってクリアしてくれましたし、おかげで中3の夏休み前には入試レベルの問題にも比較的多く取り組める時間を作ることが出来ました。
そして、合格に必要な学力を得るための「学習量」を週単位で確実にこなせるレベルに到達し、これは志望校合格の可能性が高まったなと感じました。
それでも受験は何が起こるか分かりませんから、さらに、入試前の12月からもう一段ギアを上げ、過去問演習や過去問をより深く理解するための課題をこなすため、ほぼ毎日のように塾に来るようにし、その点もこなしてくれた結果、見事、志望校合格を勝ち取ってくれました。
(最終的な内申点も考えると、桐蔭高校でも大丈夫だった可能性が高いと思います。ついていくのはちょっとギリギリかな?という最終学力だったので、桐蔭高校を選択しなかったことは正解でしょう)
この子は、素晴らしい継続力を見せ、そして学習量を確保することで、能力を上げ、学力を発揮できるようになってくれました。
3年間の自習室利用時間を計算すると、1,000時間を超えているのではないでしょうか。
(でも、運動で高校行く人も、1,000時間かそれ以上に練習して行ってますから同じですね)
今も、高校内容の予習のため、週に10時間は自習室に来るよう伝えていますが、今のところ守られています。
そして、後輩たちも同様の動きを見せてくれている子が、中1から偏差値を10以上上昇させる結果を出してくれています。
勉強が全てでは決してありませんし、健康であったり、人格であったり、もっと大切なものがあることは分かりますが、特に若いときは社会に出てからの実績が無いので、学力で測られることが多いのも事実ですし、それは数十年後もまた同じでしょう。
そのために当塾が役に立てたのではないか、と思えることが、塾をやっていて最も嬉しいことですし、このままいけば、20代、30代、そして、もうそこまでの生き方が間違っていても修正がほとんど効かない(と、私は思っている)おっちゃんと言われる年齢になっても生きやすい状況になるのではないかと大変期待しています。
そして私もまた、1人でも多くの塾生が、先輩の真似が出来る、更に上回ることが出来るよう、新たな年度も頑張ろうという気力が湧いてきます。
1人の子どもの努力が、本人、保護者、そして塾関係者の私をも喜ばせてくれました。
塾の人間は、子どもを支え、また子どもに支えられながら、結果を出していくのが理想形なのだろうという気持ちを強くした、今年の入試でした。
今、当該生徒に伝えたいことは、「物理、数学もいいけど、化学も早めに手をつけといて、高校が始まったときに感じるギャップをもっと小さくするために準備急いでね。今日、2月22日は自習室来てないけど、明日は来てくれると信じてるで・・・」です。
今日すら頑張れない人は、明日も頑張れないので、23日こそ来てくれると信じてます。
と、(読んでいるかどうか知りませんが)プレッシャーを与えて終わりたいと思います。
乱筆乱文失礼致しました。
以上。
